カウンセリング 再考
こんにちは。
心理士の村田です。
今日の大阪は久しぶりの雨。
緊急事態宣言が出ていることもあり、お家で過ごされている方も多いのではないでしょうか。
こんな日はゆっくり読書もいいですね。
今日は、最近読んだ本をご紹介したいと思います。
信田さよ子先生の『改訂新版 カウンセリングで何ができるか』です。
開業にあたり、「カウンセリング」について改めて考えたいと思い、手にしました。
この本は2007年に出版された『カウンセリングで何ができるか』の改訂版で、2020年10月に出されています。
この本の「はじめに」で私が感動したのが以下の部分。
一度言ったことを一年後にくりかえし語ることが、この上なく恥ずかしい。それにしても、なぜここまで強迫的に自己更新を試みるのだろう。たぶんそれは、十年一日のごとく同じことをくりかえしているひとたちに対する軽蔑の念があるからだ。
本当に、頭を殴られるような衝撃でした。笑
74歳になっても自己更新を試みる。なんて前向きでエネルギーをもらえるんだろう、と思うのと同時に、がんばらなきゃな、と姿勢を正す思いがしました。
カウンセリングで何をするか
さて、「カウンセリング」という言葉自体は広く相談支援を指すかと思いますが、ここでは「心理カウンセリング」について考えます。
カウンセリングで実際何をするかですが、この本にも書かれているように、端的に言うと「経験を整理し、構造化する」ことではないかと思います。
何かについてあまり知識がなかったり、情報があいまいなとき、対する問題がとても大きく見えたり、不安に思ったり怖くなったりすることが多くあります。
例えば、初対面の人と会うとき。
どんな人か知らないと、何を話せばいいのか、どんなキャラでいこうか、楽しく話せるだろうかなど、色々な心配事が浮かんできます。
でも、一度会って、「お酒とスノーボードが好きな人。真面目すぎるよりも、ちょっとくだけて話すほうが話しやすい。でもくだけ過ぎには注意」というように自分の中で整理できていると、2回目以降に会うときはずっと楽にお話できると思います。
反対に、どういう人かつかめないままだと、やっぱり不安な気持ちになりやすいかもしれませんね。
このように、カウンセリングでは、あなたが今対面している課題や問題、困りごとについて、何が問題になっていて、どこに困っていて、どうなったらよさそうなのかを一緒に考えていきます。
どう伝えたらいいかわからない、という場合ももちろんあると思います。
それもお話する中で一緒に考えていきましょう。
こころの問題?考え方の問題?
そうして見えてくるものは、実際に問題になっているのは、気持ちの問題とか心の弱さなどではなく、物理的な問題であるケースが多々ある、ということです。
家族と言い争いをしてしまう場合でも、伝え方や捉え方を変えてみても、リアルな問題がそのままになっていてはやっぱりまた言い争いになるでしょう。
本書では次のように記されています。
カウンセリングとは近代に構築された心(こころ)という仮構をあつかうものではありません。もっと生々しく、ダイナミックで現実的な関係、そして支配し・される関係性、暴力の問題を正面から扱うようになったのです。このことは、これまで個人の内的世界だけに閉ざされ、個人の責任に帰されていた問題を、再度現実の関係のるつぼに投げ返すことになるでしょう。
現実の関係を変えていくことは、自分の気持ちや考えでどうこうするよりも、もっとエネルギーがいることだと思います。
そして、それに一人で立ち向かうのはもっと大変だと思います。
カウンセリングでは実際の具体的な行動・関係の変化についても考え、可能なら働きかけていきます。
ぜひ一度「カウンセリングはどうだろうか?」と考えてみてはいかがでしょうか。
(参考)
信田さよ子(2020)『改訂新版 カウンセリングで何ができるか』大月書店
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