認知行動療法(理論・技法)

認知行動療法アイキャッチ

認知行動療法(CBT)とは何か

認知行動療法は、英語のCognitive Behavioral Therapyの頭文字をとって、CBTと呼ばれます

  • 行動療法
  • 論理療法(アルバート・エリス:1913-2007)
  • 認知療法(アーロン・ベック:1921- 現在99歳!)

といった、様々な理論がベースになっており、それぞれの理論のいいとこどりをした心理療法ともいえます。

それぞれの特徴を簡単に述べると…↓

行動療法

心理学の学習理論に基づいた治療法です。

1950年代以降、スキナー B. F. (1904-1990)やアイゼンク. H. J. (1916-1997)、ウォルピ.J. (1915-1998)らによって体系化され、 発展しました。

行動療法では、不適応行動や症状を、誤った学習または今の時点で適切な学習が未達成である結果と考えます。不適応行動を新たな学習によって軽減・除去し、新たに適応的な行動を獲得することによって改善しようとするものです。

アルファベットで遊ぶ子供の写真

論理療法

論理療法は誤った信念/考え方を、イラショナル・ビリーフ(非理性的信念)と呼び、これを修正することを目的としています。

誤った信念/考え方の例

  1. 私は上手にやらねばならない
  2. 愚かな行動をする私は悪い、価値のない人間だ
  3. 私は重要な人々から認められ、受け入れられるべきだ

例のような「~しなければならない」「~でないと~だ」という考え方が誤った信念の特徴です。このような考えがいつもあると、何かうまくいかないことがあったり、失敗の体験をしたときの苦しみや、自分を認められない気持ちは大きくなります

このような考えを丁寧に見ていき、より現実的な考えや、より合理的な考えに変えたり、言い換えをしていきます。より自分にやさしい言い方、ともいえるかもしれません。

認知療法

ベックによって創案された認知療法は、クライエントの認知の歪みに焦点を当てています。

抑うつなどの感情の問題の本質は、認知の歪みであるとし、これに気づいたり修正したりすることで、抑うつ症状を改善しようとしました。

抑うつの認知の三大兆候
① 自分についての否定的な見方
② 自分を取り巻く世界についての否定的な見方
③ 自分の将来についての否定的な見方

こうした否定的な考えが、ある状況(刺激)で自動的に浮かんでくることで、抑うつ症状が生じると考えました。

CBTの成立

このように、もともとは、それぞれが別の理論でした。
橋渡しとなったのは、社会的学習理論を提唱したバンデューラ.Aです。

彼は、学習理論における行動の変容を高めるためには、自己効力感(self-efficacy)という認知的な変数が重要になると指摘しました。

 

認知療法図

CBTでベースとなっているのは、上の刺激-認知過程-反応の図式です。心理的な問題は、このなかの「認知」の過程における歪みに媒介されて生じると説明されます。

症状や困りごとの改善のために、クライエントの悲観的な思考や思い込みを修正することや、実際の行動の変化にも取り組んでいきます。

認知の歪み(マイナスの自動思考)の例

代表的な「認知の歪み」と言われるものを、以下に挙げました。認知の歪みは、認知の偏り、考え方のクセなどとも呼ばれます。適応的な行動を抑制したり、ネガティブに影響する考えのことです。

例えば、先ほどの「太ったなあ」→「でも、ちょっとくらい食べる量を変えたって変わらないや」という認知は、5つ目の「自分で実現してしまう予言」と考えることができます。次の行動は自分で選択できるにも関わらず、悪い結果を予想することで、行動は変わらず、結局予想していた悪い結果が実現してしまいます。

  1. 過度の一般化
  2. べき思考
  3. 自己関連付け
  4. 白黒思考
  5. 自分で実現してしまう予言 など

CBTでは、クライエント自身がこれらの認知の歪みに対し、より適応的で現実的なものの見方があることを自覚できるように援助します。

また、より適応的な行動を身に着けることを目的として、自分自身の行動修正に向けて、新たな行動・習慣を身に着けていくことを目指します。

CBTの有効性

CBTは、さまざまな心理的な問題への効果が実証されている心理療法のひとつです。
日本では、2010年からうつ病などの気分障害の患者さんを対象として、認知療法・認知行動療法の健康保険が適用可能となっています。ただ、診療時間の問題や、実施者が不足していることなどもあり、希望される方は事前に病院に確認してみましょう。

効果が認められている症状の例として、以下のものが挙げられます。
今後も研究が重ねられていくなかで、効果が実証されるものも増えてくると思います。

  • うつ病
  • 不安症、社交不安症
  • 強迫症
  • 不眠症
  • 摂食障害
  • 重度の精神疾患
  • 疼痛 など

CBTでの取り組み

実際の取り組みでは、 認知に関わる技法行動に関わる技法の2つから成ります。
人それぞれの困りごとや、改善したいポイントなどに合わせて、必要に応じて使い分けをしながら進めていきます。以下に紹介するものは一例であり、いつも、すべて用いられるわけではありません。

認知的技法

認知的な側面に関わるものは、以下のようなものです。

  • 問題を引き起こしている思考のパターンや偏りを認識し、現実に照らしてそれらを再評価することを学ぶ(バランスのよい考え方を取り入れる
  • 他人の行動や動機をよりよく理解する
  • 困難な状況に対処するための問題解決スキルの使用

分析する人のイラスト

行動的技法

行動に関するものは、以下のようなものです。

  • 心を落ち着かせ、体をリラックスさせる
  • 対人関係でのコミュニケーションを振り返るためにロールプレイングを使用する
  • 日々の活動を記録し、行動レパートリーを増やす

グラフを検討する人のイラスト

日々の取り組み

CBTでの取り組みは、日常生活にしっかりと根付け、関連させることを重視します。そのため、ホームワーク(宿題)といって、生活記録や活動記録をつけたり、次回までに取り組むことが提案されたりします。

また、CBTでは、「セルフモニタリング」が重視されています。
生活のなかで気になることはあったけど、実際のカウンセリングの場面では忘れていて話せなかったり、細かい部分が伝えられなかったりすることがあると思います。

日常の出来事の中で生じた感情や考え、そのときの行動などを記録することで、より詳細に検討を行うことができるようになります。

ノートと女の子のイラスト

カウンセリングルーム Peonyでできること

  • 認知行動療法に関する心理教育
  • ワークシートを用いたCBTの取り組み
  • 日常生活で使えるセルフヘルプのヒント など

対面はもちろん、オンラインでの対応も可能です。
興味がある方はぜひお問い合わせください。

予約
カウンセリングルーム Peonyの予約手順を紹介しています。初回30分2,200円(税込み)です。同意書やキャンセルについてもここから確認することができます。

(参考)

  • 大野裕『「うつ」を治す』PHP新書、2014
  • 高垣忠一郎『カウンセリングを語る―自己肯定感を育てる作法』かもがわ出版、2010
  • 山口陽弘・高橋美保『試験にでる心理学 臨床心理学編』北大路書房、2004
  • 山内弘継・橋本宰(監修)『心理学概論』ナカニシヤ出版、2006