疲れの正体とは?【デフォルト・モード・ネットワーク】

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今日は何もしてないけど、なんだか疲れた…

そんな日はありませんか?

仕事も休みで、一日家で過ごしていたけど、頭が重い。
動いてないから体は疲れてないけど、なんだかすごく疲れた感じがする。

その疲労感の理由は、「脳」が疲れているからかもしれません。

頭を抱える人の写真

現代人の生活は、脳への負担がとても大きいと言われています。
起きてスマホの確認、電車の時間を検索して、電車ではニュースをチェック。
会社に着いたらメールに返信して、同僚とはチャットで連絡。お昼は食べながらSNSをチェック・・・

これでは、なかなか休まる時間がありません。

疲れの種類

疲れには、以下の3つの種類があると言われています。

  1. 身体的な疲れ
  2. 心理的な疲れ
  3. 神経的な疲れ

それぞれ簡単に説明します。

身体的な疲れ

身体的な疲れは、一番イメージしやすいかと思います。
スポーツなどで体を動かした後、一日遊園地で遊びまわった後など、体の節々が痛んだり、ダル重く感じたりしますよね。この時、疲労物質が体に蓄積し、思うように身体が動かないことを脳にフィードバックすることで、脳が「体の疲れ」に気づきます。

心理的な疲れ

複雑な人間関係、悩み事などのストレスからくる心理的な疲労です。
不安な状態、緊張した状態が続くと、気分が落ち込んだり、イライラしやすくなったりします。
食欲の変化や寝つきの悪さなど、行動の変化にも表れることがあるので、普段の自分とそうでない自分の状態についてしっかり知っておくことが大切です。

身体的な疲れ、神経的な疲れと違い、心理的な疲れは自分自身で作り出してしまうことがポイントです。
最近の研究では、ストレスとなりうる刺激や状況そのものよりも、ストレスに対する「反応」のほうがメンタルヘルスへの影響が大きいと言われています。

(これについては、またどこかで記事にしたいと思います。)

神経的な疲れ

これが、最初に出てきた「脳の疲れ」です。
長時間のPC作業の合間に、スマホでSNSをチェックするなど、目や脳を酷使していませんか?
長時間スマホを使用することで、常に情報を浴びている状態になります。このことが脳の疲労につながり、物事を深く考えることが難しくなります。また、隙間時間を確保できなくなり、「ぼんやり」考える時間も減ってしまします。

progressive devices

何もしていないときの脳の働き

しばらく椅子に座って何もせず、眼を閉じてみましょう。

何秒かすると

「こんなことをして何になるんだろう」
「最近忙しかったし、なんだか疲れたな」
「今日は帰って何を食べようかな」

…などなど

いろいろな考えが浮かんでくると思います。

このような
「意識的な活動をしていないときに働く脳のベースライン活動」のことを、デフォルト・モード・ネットワーク(DMN)と言います。

脳では、身体に取り込まれたエネルギーの20%が使用されます。
そして、そのうちの、なんと60~80%がこのDMNで消費されることになります。何もしていないつもりでも、脳は常に活動してエネルギーを消費しているんですね。

そして、私自身も驚いたのですが、「何か意識的な活動」をする際に必要なエネルギーは、DMNの状態からわずか5%ほど追加される程度なんだそうです。ほぼほぼ、アイドリング状態であるDMNで消費されているんですね。

脳に負担がかかりやすい「反すう思考」

このDMNを司る脳の部位(内側前頭前野、後帯状皮質、楔前部、小頭頂小葉など)は「自己へのとらわれ」にも関連する部位だと言われています。

「自己へのとらわれ」というのは、うつ病の人や、気分が落ち込んでいるときなどによくみられる「反すう思考(rumination)」とも強く関連しています。

反すう思考の例

  • 「あのとき、あんなこと言わなければよかった」
  • 「なんであんなことしてしまったんだろう」
  • 「これからどうなってしまうんだろう」
  • 「こんなことが起きたらどうしよう」 など

反すう思考は「ぐるぐる思考」とも言われ、気分が落ち込んだりしてぐるぐる考えている状態では、どんどん脳が疲れてしまいます。

これは多くの場合、「なんであんなことを言ってしまったんだ」という「過去」の後悔、そして「これからどうなるんだろう」という「未来」への不安の2つで構成されています。

常に「過去」や「未来」のことに注意を向けていると、「いま」への意識は向きにくくなります。ずっと同じ姿勢でいると、筋肉がコチコチに凝り固まって、動くときに痛みが生じたりしますよね。

それと同じで、「過去」に向いた思考を「いま」に戻して、「未来」に向いた思考を「いま」に戻して、というふうに、こころもストレッチをすることが必要です。

そしてそのことが、DMNの活動を抑え、脳の疲れを低減することにもつながります。

「いま」に意識を向けるには?

小さい子どもや動物などは、基本的に「いま」のことしか考えていません。「子どもはいいなあ」「私も猫になりたい」と思うのは(思うことありませんか?)、そういう理由もあるのではないでしょうか。

「いま」に意識が向きやすくなっている人にとって、現在もっとも有力なのは「瞑想」です。

特に「マインドフルネス瞑想」「マインドフルネス呼吸法」といわれるような、「いまここに意識を向ける」ことに重きをおいているものが有効です。実際に、これらを取り入れることで、DMNに関わる脳部位の活動の変化が見られたことが報告されています。

瞑想する人の写真

現在のコロナ禍において、また年度が変わり、環境や人間関係の変化により、不安に思う場面は多いかもしれません。

反すう思考になっているかも!という人は、この機会に「こころのストレッチ」を意識して、「いま」に意識を向ける練習をしてみましょう。

書籍の紹介

今回の内容は、以下の書籍を参考にしています。
脳科学に基づいて、脳の休め方や関わり方について紹介されています。
物語仕立てなので、難しい単語があっても理解しやすく、とっても勉強になる1冊です。

ぜひ手にとってみてください。

久賀谷亮
『世界のエリートがやっている 最高の休息法』ダイヤモンド社、2016
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